ビッグボスこと新庄剛志監督は落合博満になれるのか?【篁五郎】
2021年11月4日、北海道日本ハムファイターズの監督に就任した新庄剛志氏が記者会見を開き、正式に新庄監督が誕生した。背番号は現役時代につけていた1を背負うと発表。しかし番号にふさわしい選手が現れたら譲るという発言も話題になった。
会見で新庄氏は、「(監督に就任が決まり)正直、自分が一番びっくり。僕でいいのかなという思いの反面、僕しかいない。ファイターズを変えていきたいし、僕がプロ野球を変えていきたい」と語り、終始笑顔で報道陣からの質問に答えていた。オーナーからは「1つはチームを勝たせて、ファンに勝利を届け、常に優勝争いをするチームをつくりあげていただきたいと申しました。もう一つはファンサービスを実践して、ファンに喜びを届けていただきたい。新庄監督の持ち前の実行力と常識にとらわれない発想力をもってすれば、この2つのミッションは必ず成し遂げてくれ、強いファイターズを復活させてくれると信じています」と二つのミッションを課したことを明かした。
そして、すっかりお馴染みとなった「ビッグボス」発言も就任会見で飛び出している。「球場の天井から登場」など破天荒な公約に注目が集まり、メディア分析・調査を行う「ニホンモニター」によれば、就任会見から2日間の露出効果は、広告費に換算して、なんと105億円もの効果があったという。オフには日本ハムのGMに就任した稲葉篤紀氏と一緒にお正月恒例の『芸能人格付けチェック』(テレ朝系)に出演するなど新庄フィーバーが沸き起こった。
昨年の夏には主力選手だった中田翔が後輩選手への暴行と差別発言で問題を起こしていたのは、どうしたのやらと言わんばかりに日本ハムファイターズは新庄効果でオフの話題を独り占めした。
しかし明るい話題だけではない。新庄フィーバーの裏側では大田泰示外野手、西川遥輝外野手、秋吉亮投手の3選手を自由契約にしてノンテンダー扱いすることが決定された。日本ハムは元々フロントが人事を主導する球団で監督に口を挟む余地はない。3人のノンテンダー扱いも稲葉GMと前GMで現在はチーム統括本部長を務める吉村浩氏が中心となって決めた。
3選手への伝え方も11月16日に秋季キャンプをやっている千葉の鎌ケ谷球場に呼び出し、稲葉GMが直接伝えたという。球団側の説明によれば「3選手と来季以降のプレー環境について協議した結果」と説明しているが、一度も話し合いなどしないで通告したと週刊文春は報じている。
自由契約となった大田泰示は、昨年11月28日に出演したラジオ番組でこう語っていた。
「まず今年のシーズン、自分の成績を見たときにかなり厳しい契約になるだろうなと思っていましたし、栗山監督がおやめになって新しい監督が、新庄監督というところでチームの若返り、チームの改革をしてくるだろうというふうに自分の中でも思っている部分はあったのでこういう結果になってしまったのもの覚悟はしている部分はあった」と語り、覚悟はしていたという。しかし「心の準備といいますか色々考えてオフに入り、実際にそういうふうになった時というのは本当に頭の中が真っ白になるというか、目の前が真っ白になるというか。人生の中でもこういう経験はしたことがないくらいビックリしました」と衝撃を受けたことを明かした。
大田は橫浜DeNAベイスターズ、西川遥輝は東北楽天ゴールデンイーグルス、秋吉亮は独立リーグ福井ネクサスエレファンツ入りが報じられ、日本ハムとの再契約とはならなかった。この件についてファンから球団に「本当に再契約する気があったのか?」と疑問の声が上がったが、稲葉GMは「再契約も考えていた。ノンテンダーってそういう意味ですし。ただまとまらなかったということ」と話した。フロントの姿勢に選手からは「ふざけんな!」という声が出ているらしい。
そんな声はビックボスこと新庄の耳にも届いているだろう。だが、そんなことはお構いなしとばかりにキャンプイン初日にはゴードン社製の白いトライク(3輪バイク)で練習場へ登場し、報道陣にのど飴のプレゼントをする気配りを見せる。就任会見の翌日には「実力の世界なので、下手な者はユニホームを脱いでもらわないと。グラウンドに立つ前の準備や、夜、人が寝ている時に練習すればいいだけのこと」と言ってのけ、選手を練習漬けにすることを予告した。そして「選手はみんな横一線」と断言し、スポーツ新聞の記者は「実際の選手起用は、シビアな実力主義になるのではないかと話題になっています。戦術面では、ヒットを打たなくても点の取れる面白さを見せたい」と新庄野球を予測している。